
ワット=シーチュムを出て南へ行くと、まもなくスコータイとタークを結ぶ広い道
(国道12号線)に出るので右折して西へ向かう。どこまで行けばいいのか見当がつかない道は、
とても長く感じられる。15分ほどで「左、ワット=サパーンヒン」の看板が見えた。
そこに料金所があって、共通入場券を見せるとスタンプを押してくれる。
さらに1qほど行くと、ようやく
ワット=サパーンヒンに到着した。
ラームカムヘーン大王が建立したこの寺院は、200mほどの丘の上に建っており、ふもとから頂上までスレート板が敷かれている。
サパーン(橋)ヒン(石)の名の由来だろう。下から見ると登るのはたいへんそうだが、
5分ほどがんばって頂上にたどり着けば、高さ12.5mの大きな仏像(「アッターロット仏」)が優しい顔で迎えてくれる。
吹き抜ける風も涼しい。スコータイの中心方面を見ると、緑の木々の中に寺院が点々と見える。
他に2組5人のタイ人観光客がいるのみの、静かな寺院だった。

ここから道なりに自転車をこいでいくと、明るい森の中に入っていくような感じで、
観光客もほとんどいない。やがて道の右手の丘の上に、
ワット=プラバートノーイの
釣り鐘型の仏塔が茂みに隠れるように立っていた。道をはさんだ反対側には、
ワット=チャーンロープ
がある。仏塔は24頭の半身の象が支える様式だがすべて壊れていた。他にも柱が何本か残っているが、完全に忘れ去られている感じだ。
さらに道なりに行くと、また右手の小高い丘の上に美しい仏塔が見えてくる。
ワット=チェディーガーム
だ。自転車を降りて丘を登るとその名の通り(ガームとは美しいの意味)、美しく均整のとれた釣り鐘型のチェディーと、
本堂あとの柱が残っていた。他に誰もいない、静寂の中にたたずむ遺跡である。

ここを過ぎると道は若干下りになり、小さな集落も現れて、なんか元気が出てくる。
ちょうど雲も出てきて涼しくなった。
ワット=マンコンには、
上部は無くなっているもののどっしりしたチェディーと基壇と柱があった。
その他にもこの道沿いには、
ワット=パーサック、
マハーカセットピーマン神殿など、
大小様々な寺院のあとが残され、往時にはずいぶんにぎやかだったんだろう。ただ、
遺跡を見に草むらに入っていくと、トゲの付いた実がズボンにたくさんくっつくのがうっとうしい。

さらに道なりに行くと、スコータイの西門(オー門)にたどり着く。門を入って右折し、
城壁沿いに南門(ナモー門)まで走り、さらに右折して南へ向かう。道は細いが集落が続き、人気は多い。
ナモー門からおよそ1q行ったところに「ワット=トンチャン」の看板があるので、
そこを左へ入る。細い未舗装の道の脇で、近所のおばさんが池で魚を釣っていた。
今晩のおかずにするのだろうか。やがて、ぼうぼうの草むらの中に
ワット=トンチャン
がひっそりたたずんでいるのが見える。崩れて中のレンガがむき出している肩から下だけの仏座像と釣り鐘型の仏塔が1基残されていた。

もとの道に戻り、さらに南下すると
ワット=チェトゥポンに到着する。
真っ先に目に飛び込んでくるのは、真ん中にある大きな四角柱に背中合わせに立つ、
仏立像と遊行仏の姿である。両方とも頭部が崩壊しているが、その大きさと優美さは印象的だ。
あとの2面には仏座像と寝仏があったはずだが、今はその跡が残るのみだ。その奥には上部が崩れた仏塔があり、
中には仏座像が一体祀られていた。また、四面仏の手前の本堂あとには石積みの壁が、
また寺院を取り囲むようにして50pほどの壁が残されており、当時の姿がおぼろげながら想像できる。
城壁の南部では最も有名な寺院なのだが、夕方午後4時という時間のためか、他に誰もいなかった。

チェトゥポンのすぐ隣には、
ワット=チェディーシーホーンがある。
中央の釣り鐘型のチェディーの基部には、着飾った人物や、象に乗ったガルーダのレリーフがよく残っている。
ここにはフランス人(?)数人の乗ったバンが来ていた。久しぶりに観光客に出会った。
ここから道を東に行くと、右手やや遠くに
ワット=シーピチットキティカリヤラム
の大きな仏塔が見える。寄って行きたかったが、まだ城壁の東部を見ていないので、先を急いだ。
この道沿いにも
ワット=アソカラムをはじめ寺院跡が多く、それぞれ味がある。
時間があればじっくり見たい地域だ。
まもなく大きな道に出るので、そこを右折すると城壁の東部になる。
最初に
ワット=トラパントーンランへ向かう。
ここには今も僧がいて、生きている寺院だ。奥の方に古いレンガ造りの本堂があり、
その外壁にはブッダに関する説話を題材にした絵があったというが、はっきりいってよくわからなかった。
しかも夕方になって元気を取り戻した野良犬が10匹ほど、さかんにほえてきて、本当にうっとうしい。
タイでは犬は下等な動物とされているのも納得できる。かまれたら厄介なので早々に退散した。

次にワット=チャーンロムへ向かったが、入口がわからず行けなかった。
夕方の5時を過ぎ、うっすらと日もかげってきたせいか、看板を見過ごしたのかもしれない。
疲れもたまり気力も萎えてきた気もする。最後に城壁内に戻り、一番最初に見た国立博物館のすぐ東の、
ワット=トラパントーンを訪ねた。入口の辺りはにぎやかな市場で、
中へ入るとここにも僧がいた。池に囲まれ落ち着いた雰囲気の寺院だった。
午後5時半、自転車を返しにコンビニに寄った。店の中に入ってジュースを買い、
絵はがきを選んでいると、朝には見なかった女の子が店を手伝っていた。聞くと中2だと答えて笑った。
遺跡公園からソンテウに乗ってスコータイの街へ帰る。ホテルの部屋で休憩していたら、
いつの間にか寝ていたらしい。気づくと午後9時になっていたので、空きっ腹を抱えて街に飛び出した。
ヨム川沿いの公園の向かいの食堂に入って、まずはビアシン大瓶を注文して一口飲む。
汗の出きった身体にしみ込んでいく。と同時に急に便意を催したのでトイレを借りようとしたが、
ここにはないらしく、店主のおじさんは向かいの公園のトイレに行けと言う。ところが夜遅い時間のためか、
すべて鍵がかけられていた。あせって店に戻り事情を話すと、店主氏は「あまりよくないけど、うちのを使いな」と、
プライベート用のトイレを貸してくれた。あー、助かった。

そんなやりとりでタイ語がわかると知ったためか、
別の席で一人でタイウィスキーを飲んでいたおじさんが、一緒に飲んでいいかと声をかけ、席を移ってきた。
他に客もないので、店主氏も一緒にテーブルについてウィスキーを飲み始める。
適度な酔いは会話を盛りあげてくれる。日本のこと、タイのこと、いろいろとりとめのない話が続いた。
ヨム川の水があふれているね、と聞くと、これでも水位は下がった方で、
2か月前はこの辺りも冠水してたいへんだったそうだ。
飲んでいると、何かが上からポトッと落ちてくる。
見るとテーブルの上に覆い被さっている木に、サクランボを小さくしたような実がたくさんなっていた。
この実は食べられるよと言って、店のおじさんが何個か取ってきてくれた。実は熟して柔らかくかなり甘かった。
いつの間にか夜は更けた。楽しい時間はすぐに過ぎてしまう。
12時近くになりお開きになった。酔っぱらいおじさんはバイクを運転して家に帰っていった。
すると店主氏がホテルまで送るからと、とめてあったトゥクトゥクを運転して(酔っぱらい運転だが)
親切にも送ってくれた。充実した長い一日だった。