郊外の見どころ(2)
国立象研究所(タイ象保護センター)
かわいい子象
象のショーが見られたり、象に乗ったりできる施設だが、ここはタイに数あるその種の商業施設とは全く異なるものだ。
現在、タイの象が置かれている状況はたいへん厳しい。森林伐採が禁止されて、象と象使いは仕事を失ってしまった。違法な伐採に従事するか、観光しか道はない。一部の象は、コンクリートジャングルのバンコクの町まで出稼ぎに来て、観光客にえさをねだっている。(現在この行為は禁止されているようだ。)
こういった厳しい状況を背景に、この施設は1991年、林業公団によって設立された。象を利用した林業技術の保全、研究に必要な象に関するデータや知識の収集やエコツーリズムの発展を目的した施設で、中には象の病院や象のフンから紙やメタンガスを造る工場まである。
タイの象とふれあい、象に癒されながら、タイの象の今後について思いを馳せるにはぴったりの場所だ。
園内のトラム
データ
入場 毎日 8:00〜。入場料50B+場内トラム代20B。
ショー 毎日10:00から、11:00から。土日祝日は13:30からも追加。約30分。
象乗り 8:00〜15:30。1人10分間50B、2人30分間400B、2人1時間800B。
象の水浴び 9:45、13:15。
◇施設の概要 ▼来歴 ▼おもな活動 ◇象のショー ◇象に乗る ◇象の病院 ◇その他の施設 ◇行き方
◇施設の概略
タイ象保護センター入口
来歴
チーク材の輸出をタイ国政府の事業として行うため、1933年設立された「森林部」は、1947年、農業・協同省付属(現在は、天然資源・環境省付属)の「林業公団」に改組された。何百年と受け継がれてきた、象による木の切り出しもこの林業公団が受け継ぐことになった。
1989年、政府は業者に与えてきた森林伐採権を取り消したが、違法な伐採は続けられた。業者は摘発を逃れるため、時間に追われて仕事を行い、象にも重労働を課したり、時には深夜まで働かせたりした。また、摘発された業者の象が裁判所により没収される場合もあり、象を取りまく状況は厳しくなっていった。
1991年林業公団は、ラムパーン県ガーオ郡にあった「子象訓練センター」を現在の場所に移し、
「タイ象保護センター」を設立した。このセンターでは、象を使った林業の技術とアイデンティティーを保存すること、今後の研究に必要な象に関する情報や知識を集めること、エコツーリズムの発展などを目的にしている。
2002年、国王の姉にあたる、カンラヤーニワッタナー妃殿下が来場した際、林業公団総裁は「タイ象保護センター」を
「国立象研究所」に格上げする計画を奏上し、同時にそのための支援を求めたところ、妃殿下はこれを了承された。
おもな活動
ショー会場のゲート
(1)観光・エコツーリズム
・毎日行われる象のショー
詳しくは→
・象乗り体験
詳しくは→
・ホームステイ…象使いの家に滞在しながら、象使いの生活を体験する。朝、森に象を迎えに出かけ、象乗りの訓練や象への命令などを練習する。夕方には象を森に連れ帰り、一緒に食事作りを行う。1泊2日で5,500B/人、2泊3日で8,000B/人。
・象使いの訓練…6日間20,000B/人、10日間35,000B/人など。
(2)学術研究
・学術資料情報センター…象に関する展示。精子の冷凍保全も行っている。
・獣医研修センター
・エコ燃料の研究…象のフンから生体ガスを発生させ、象使いの家にガスを引いたり、発電を行い水のくみ上げポンプなどに利用している。太陽光発電も行っている。
入院中の象 ガンバレ!
(3)「象医学」の発展
・象の病院…当施設の象はもちろん、他施設や個人所有の象も、無料で治療にあたっている。
詳しくは→
・訪問医療…北部各県の象を往診している。
・国王から白象ほか大切な象6頭を、自然のなかで休息させるためにあずかり、獣医が24時間体制で世話している。
・象保護センター…この施設が1991年まであったラムパーン県ガーオ郡の跡地に、病気や年老いた象、障害を持った象やどう猛で手におえない象などを保護している。
(4)その他の活動
・象の里親計画…象を援助するため、里親を募集している。
・象の芸術振興計画…象が演奏した音楽のCDや、象が描いた絵画を販売している。
・象を森に返す計画…ラムパーン県・ラムプーン県境の森に象を返し、係員が巡回して象の健康状態などをチェックしている。
・象使い育成教育学校
・さまざまな製品の販売…象のフンからつくった紙や堆肥、音楽CDや絵画など
(以上、
当施設のサイトの記事を抄訳しました。)
◇象のショー
11:00から始まるショーを見学した。観客はざっと見て100人前後、外国人は10〜15人程度だろうか。タイ語と英語のナレーションでショーは進められていく。時間になると、約10頭の象が一列に並んで入場してきた。鼻で前の象のしっぽをつかみながら歩く様子がかわいい。一頭の象が掲揚塔のひもを鼻で引っ張って旗を揚げ、ショーが始まった。
象の入場
象の入場(2)
鐘を鳴らしてショーの開始
ショー会場に勢揃い
ナレーションが象の名前と年齢を一頭ずつ紹介していくと、お辞儀をしてあいさつする。みんなここの象学校で勉強中の、5〜14歳の若い象だそうだ。象使いが象に乗り降りする方法、象使いが持つ棒を拾う方法(それぞれ何種類か方法がある)に続いて、ナレーションの声に従って寝たり起きたりする。象使いは、棒で叩いたり、耳の後ろを蹴ったり、約40あることばで指示を出したりして、象を操っているそうだ。
丸太運びでは、牙や鼻を器用に使い丸太を軽々と持ち上げる。2頭で持ち上げたり、足で蹴りながら運んだり、いかだが組めるよう丸太をそろえたり積んだりもできる。大きな体に似合わずたいへん器用で、4本の足で丸太の上に乗ったり、丸太上でUターンまでできるのには驚いた。狭い場所や斜面の多い山林で重宝されるわけだ。
ゴロン!
鼻で帽子をつかむ
牙と鼻で丸太を運ぶ
2頭協力しての丸太運び

2頭の象が鼻で絵筆を持って絵を描き始める。抽象画のようだが、意外と上手かもしれない。(絵は近くの売店で売られている。)竹でできた楽器を鼻で揺らしながら、タイの「象の歌」を演奏する。最後にあいさつをしてショーは終わった。
この後は象が観客にえさをもらいに来る。(中にはショーの最中からえさをねだりに来るのもいる。)えさは、サトウキビ一束10B、野菜のかご盛りが30Bで売られているので、象に渡すことができる。象を間近で見て触れあえるので、とても楽しい。近くで見ても、優しい目をしたかわいい連中だ。象は鼻でえさを受け取るが、サトウキビを何本も鼻に持ちながら、一本ずつ口へ運ぶ象もいれば、背中に乗っている象使いにサトウキビを預かってもらい、食べると鼻を象使いに向けて催促する象もいる。観客が差し出すサトウキビを一瞥して、別の観客が差し出すイモをねだる象もいる。この辺りは象の個性が出ていて、とてもおもしろい。
象の賢さや器用さを実感しながら、象の愛嬌あるしぐさに心癒される時間だった。
得意げに絵を描く
みんなで「象の歌」を合奏
おなか、すいたよ!
おじさん、とっておいてね。
◇象に乗る
ショーが行われる広場から看板に沿って2分ほど歩いたところから、象に乗ることができる。乗る時間を言ってチケットを買って待っていると、象がやってくる。
私たちは30分コース(2人で400B)にした。まず近くの浅い川を渡り、つづいて急斜面を上り、山の中に入っていった。
象の背中からの風景
象使いのおじさんは、言葉をかけながら、先に鈎(かぎ)がついた棒で象を叩きながら進む。象の背中はけっこう揺れるので、最初は力が入るが、やがて慣れると心地いいものだ。象使いは、象のクビの部分に乗っている。以前、象使いに勧められてそこに乗ったことがあるが、捕まるところがないので、バランスを取るのがたいへんだった。今回もクビのところに乗ってみないかと言われたが、かなりの斜面なので遠慮しておいた。
象は山道で時々止まって草をむしゃむしゃ食べる。象使いのおじさんはそのたびに棒で叩く。するとしょうがないなあという感じで象が動く。おじさんに、「そんなに叩いたら象は痛くないの?」と聞くと、「大丈夫。皮がすごい厚いんだ。」そうだ。
客を乗せて働く象たち
山を下りて、池の周辺を歩くとまもなくゴールになる。象を降りる直前に写真を撮られ、簡単な写真立てに入れて200Bで売ってくれる。決して安くはないが、30分も付き合ってくれた象へのお礼と、この施設のために、ぜひ購入していただきたい。象を降りたところには、やはりサトウキビやバナナが売っていて、今乗ってきた象にあげられるようになっている。
タイにはこのように象に乗ることのできる施設はたくさんあるが、中には象に無理させているところもあるようだ。その点この施設の象は、無理させないように管理されているそうだ。
◇象の病院
象の病院 全景
象のショーが行われる広場から歩いて5分ほどの所に象の病院がある。タイの象を取りまく厳しい状況のなかで、違法業者に重労働を課せられたり、観光客を乗せてへとへとに疲れたりした象が、ここで治療を受けている。すべて寄付でまかなわれ、無料である。
事務所の壁に掲げられた白板には、入院患者の名前、入退院日、病名などが書かれている。ケガ、はれものに混じって、衰弱という理由もあった。事務所をはさんで両側に象の「病室」が並び、3頭ほど入院中だった。とくに一番そばにいた象は、右後ろ足にケガをしたのか、患部に大きな薬(?)を張られ、点滴も受けて痛々しい。それでも看護師さん(?)からもらったバナナの茎や葉をモリモリ食べていた。早く回復してほしい。
なお、当施設に隣接して「象の友人基金」が経営する別の病院もあり、1999年に地雷を踏んでしまった雌象モーターラーは、こちらの病院に入院して、義足を付ける治療を受けている。詳しくは
→こちら
入院中の象たち
右足にケガをした象
入院患者の名簿
新規入院患者?
◇その他の施設
シリントン王女のことば
(1)ビジターセンター…施設の案内、象についての紹介などが、パネル展示してある。まわり方のモデルプランも掲示してあるので、最初に立ち寄るといいかもしれない。
(2)みやげ物屋…象のショー広場周辺には、象が描いた絵画、象のフンからつくった紙を使ったメモ帳や写真立てなどの紙製品などが売られている。
(3)食堂…簡単な食事や飲み物がとれる。
※駐車場にも、みやげ物屋や食堂がある。
◇行き方
チエンマイ-ラムパーン間のバス
(1)公共バスで…ラムパーンのバスターミナルから、チエンマイ行きの普通バスに乗る。緑色の車体で、エアコンはない。国道11号を進んで28kmポストを過ぎたあたり、右手に見える。車掌さんに下ろしてもらうよう頼んでおく方がよい。ラムパーンから35〜40分。片道25Bほど。
バスを降りて道を渡り、施設に入場したら左に2、3分歩くと、駐車場がある。ここからトラムに乗ると、入場券売り場を経由して、象のショー広場まで連れて行ってくれる。
(2)ソンテウをチャーター…交渉制。向こうで何時間待ってもらうかも含めて、あらかじめ価格を交渉して決めること。半日で500B前後だと思う。
(3)チエンマイからツアーに参加…いくつか旅行会社があるので、比較検討することをおすすめする。ラムパーンの寺院など他の見どころ、ラムプーンの寺院もまわって1日1人2,000〜3,000B前後。